東海障害者歯科臨床研修会
総会および学術大会の報告



大会長から皆様へ
                                             第6回東海障害者歯科臨床研究会
                      大 会 長:鈴木 俊行


去る7月13日に第6回東海障害者歯科臨床研究会総会および学術大会が三重県歯科医師会館で開催されました。

午前中には認定医研修会を開催し 長年三重県の重症心身障害者の治療や療育に携わってこられた三重県済生会明和病院 重症心身障害者施設なでしこの施設長 樋口和郎先生に「重症心身障害児の病態とその対応」の演題でご講演いただきました。″障害を持つ人々にこそ光を当てねばならない″との基本理念のもとで 重症心身障害者の持つ医学的問題点を 長年苦労された種々の経験を披露されながら講演され 会員に大きな感動を与えられました。

午後は総会の後 ″障害者歯科における緊急時の対応″をテーマに AHA三重トレーニングセンターのサイト長石倉健先生をはじめ10名のインストラクターによる実習を含めた緊急対応の講演を行いました。緊急時に起こっていることを正しくそして素早く認識し 加えて素早く対応するためには 実戦を想定した研修が不可欠と考え 通常の学術大会では考えられない実習を含めた大会になりました。中でも歯科の場面で起こりうる様々な緊急事態を提示して 参加者にいま何が起こっているか そしてどう対応すればよいかを考えてもらうシナリオステーションは 多くの参加者に少なからぬ衝撃を与えたのではないでしょうか。

障害者歯科は緊急事態が最も起こりやすい分野です。今後も時々はこのような実習を含めたトレーニングを開催することも必要となるでしょう。いずれにしても参加された皆様には 椅子も机もなく CPR用の人形が配置されている会場に入っただけでびっくりされたことでしょう。

今回は実習用の人形の準備やインストラクターの確保に制限があるため 参加者を先着100名とし 申込み制にさせていただきましたので 参加される皆様には大変面倒な手続きをお願いしましたが 多くの皆様には快く対応していただき 誠にありがとうございました。

今大会には三重県歯科医師会の後援をいただきました。また多くの皆様のご支援をいただきました。ここに感謝の意を表します。

研究会の風景 
受付

午前(10時〜11時半)日本障害者歯科学会認定研修会 
「重症心身障害児の病態とその対応
講師:樋口和郎先生(三重県済生会明和病院 重症心身障害者施設”なでしこ”施設長)



 幹事会


午後(13時〜16時半)総会および学術大
“障害者歯科における救急時の対応


 総合司会:福田幸弘(AHA ACLSプロバイダー、BLSインストラクター)

 講師
石倉健先生(AHA三重トレーニングサイト長、三重大学医学部救命救急センター助教     他10数名のインストラクター



                                    

 参加者Voice

6回 東海障害者歯科臨床研究会総会および学術大会に参加して

藤田保健衛生大学病院 歯科衛生士 松木里沙


 今回初めて東海障害者歯科臨床研究会に参加しました。

 臨床に出てからまだ4か月ということもあり、障害者歯科に関わったことは学生時代の臨床実習以来で、このような研究会に参加できることは貴重な機会でした。

 樋口先生の講義の中で特に印象に残ったのは、気管切開の合併症に、肉芽形成、気管内出血、気管狭窄や気管軟化症があることでした。私は、現在病棟での口腔ケアに携わっており、気管切開されている患者と関わることが多くありますが、このようなリスクについて認識が足りなかったと実感しました。また、患者や家族がこのリスクについて説明されていないこともあると知り、私たちもそのリスクについて十分に理解することが必要であると思いました。

 午後に行われた学術大会では障害者歯科における緊急時の対応として、CPRAEDの取り扱い方法、緊急時を想定した対応のとり方について学びました。毎日の診療において全身疾患を抱える患者が多い中で、外来での処置中や病棟での口腔ケア中の急変時の対応法を身につけておくことは必要不可欠となります。シナリオの急変例の中には、障害者歯科に限らず日常の診療で起こりえる例が多くありました。急変時の全身評価や、対応方法を冷静に判断し、行動できることが大切であると思いました。

 今回、研修を受講したことは、歯科衛生士として、一医療従事者としてリスク管理について考える機会となりました。今回学んだことを今後の臨床に活かしていきたいと思います。


参加者Voice

6回 東海障害者歯科臨床研究会に参加して

朝日大学歯学部口腔病態学講座障害者歯科学分野 小金澤大亮

 今回、第6回東海障害者歯科臨床研究会へ参加させていただきました。三重という地での初めての当研究会開催ということで非常に楽しみにしており、また学術講演も障害者の救急蘇生ということで、普段から接している患者の急変時の対応などより多くのことを学びたいと思い参加を希望しました。

最近では僕が所属している朝日大学でも重症心身障害児・者の患者さんが受診されることが多くなって来たように感じます。また、障害者の訪問歯科診療の需要が多くなると予想され、重症心身障害児・者の患者さんと関わる機会は今後さらに多くなると思います。    

僕たちは重症心身障害児・者の患者の生活環境について知る機会が少なく、患者本人やその家族がどんな事に困っていて、歯科医療側はどの部分でそれに応えられるかを考えさせられました。

今回の研修を通じて、重症心身障害・者医療の考え方、生活環境について良く理解できました。今後、摂食・嚥下リハビリテーションや肺炎予防の口腔ケアを通じて重症心身障害児・者の患者さんと関わりたいと思いました。

障害者歯科における救急時の対応は一般のBLSに加えてシナリオステーションは歯科診療時に起こりやすい状況ごとにシナリオが組まれどう対応するかを考えながら実践的な研修が行えて大変有意義でした。



 


写真 - 東海障害者歯科臨床研究会