第5回東海障害者歯科臨床研究会     総会および学術大会           本文へジャンプ

             大会長から皆様へ
                  
               第5回東海障害者歯科臨床研究会 
                        大会長 服部 清

                              
 
去る7月28日に開催された第5回東海障害者歯科臨床研究会におきましては、主催者側の予想をはるかに上回る多くの方(午前中149名、午後136名)にご参加いただき、誠にありがとうございました。

 

今回は、午前中の認定医研修会と午後の学術大会を一つの流れとして位置付けて、「地域で診る障がい者歯科」のテーマに沿ってプログラムを企画しました。午前中は社会福祉士の安藤千晶氏に「地域で障がい者を支えるために必要な社会福祉の知識」を講演いただき、午後は、「地域で診る障がい者歯科のこれから」について指定発言者による東海4県の各県の障がい者歯科医療の現状報告と、日本障害者歯科学会理事長の緒方克也先生による特別講演、最後に総合討論という形式をとらせていただきました。

地域で診るということは、何も地域歯科医院だけで診るということでも障害者歯科センターで診るということでもありません。地域にあるすべての歯科医療機関が、自分たちの役割とできることを「無理せず」、「無視することなく」一つの地域で協働すること(歯科職種間連携)や、社会福祉士をはじめ、さまざまな支援の専門家の役割と機能を理解し、協働すること(他職種・多職種間連携)、そして本人・家族の意志に沿った医療を提供することの大切さが伝わったのであれば幸いです。また、参加された方々の地域での取り組みについて、本人や家族、他の支援者の目線で再考されることを望みます。

 

大会の準備、運営に当たり、ご後援いただきました静岡県歯科医師会をはじめ、皆様にご迷惑をおかけしたこと書面をお借りしてお詫び申し上げます。ご容赦の程よろしくお願い申し上げます。




第5回東海障害者歯科臨床研究会総会および学術大会の参加状況

 

日 時平成25年7月28日(日)

場 所:静岡県男女共同参画センター「あざれあ」

大会長:服部 清先生(静岡市障害者歯科保健センター)

 

午前中:認定研修会(午前10時?午後12時)

講 師:安藤千晶氏(静岡県社会福祉士会)

テーマ:地域で障がい者を支えるために必要な社会福祉の知識

参加人数:149名(認定医30名、認定DH28名、歯科医師29名、DH28名、その他29名、学生5名)

 

幹事会出席者数:44

 

午後:学術大会(午後1時?午後4時30分)

テーマ:地域で診る障がい者歯科

東海4県ごとの指定発言およびシンポジウム

特別講演:地域で診る障害者歯科のこれから

講 師:緒方克也先生(日本障害者歯科学会理事長)

参加人数:136名(歯科医師74名、歯科衛生士44名、その他14名、学生4名)

 



研究会の風景
  受付

午前(10時〜11時半)日本障害者歯科学会認定研修会


「地域で障がい者を支えるために必要な社会福祉の知識」

講師 :
安藤千晶 氏(静岡県社会福祉会 社会福祉士)

                            

座長:
望月 亮 先生
一般社団法人 日本障害者歯科学会 医療福祉連携委員)




幹事会



午後(13時〜16時半)総会および学術大会


討論会:「地域で見る障がい者歯科のこれから」





座長 望月 亮 先生
一般社団法人 日本障害者歯科学会 医療福祉連携委員)





指定発言者(敬称略)      
愛知県歯科医師会 
本多 豊彦
    
岐阜県歯科医師会 
中嶌 誠治

               
三重県歯科医師会 
福田 幸弘


静岡県歯科医師会 
井川 利幸








特別講演講師:
緒方克也 先生
(日本障害者歯科学会理事長)









参加者Voice

5回 東海障害者歯科臨床研究会 総会及び学術大会に参加して

 

          浜松市健康福祉部(健康増進課口腔保健医療センター) 
                          副参事 古谷みゆき

 

東海障害者歯科臨床研究会に今回初めて参加しました。静岡県には歯科大学や大学の歯学部がないので、歯科医師会、病院歯科や行政の歯科医師・歯科衛生士の皆様が力をあわせた現場の力が結集されている研究会なのだと感じました。

 学術大会で一番心に残ったのは緒方先生のお話です。20年以上前になりますが、大学の先輩や当時神奈川県立こども医療センターの医長でいらっしゃった池田正一先生から、開業医で障害のある方を熱心に診療している歯科医師がいらっしゃるということで、緒方先生のお名前を聞いておりましたが、今回初めてお話を聞き、「障害のある子どもをみて、みてみぬふりはできない、みてみぬふりをするのはプライドが無さすぎる、どの歯科医師も相談にのるのが当たり前だ。」という、緒方先生のストレートな言葉に本当に感激いたしました。

 この4月から浜松市の勤務となり、市民の方々を対象とする事業に従事しながら、日々新鮮な驚きと責任の重さを痛感しております。市の事業で障害者()の施設の歯科健診にも出向いておりますが、この歯科健診で感じるのは、この方たちが歯科疾患に罹患すると、いかに治療を受けることが大変であるかということでした。このことは裏返せば、障害のある方々は誰よりも予防が必要だということです。

障害者施設の歯科健診は歯科医師会の先生方にも御協力いただいており、10年以上継続しているので、先生方がとても慣れていらっしゃり、新参者の私よりもスムースに実施され、かかりつけ医になっている先生方も多々いらっしゃいます。実際、障害者施設で健診を受けた約80%の方が、かかりつけ医がいるということに驚きました。年に1度の健診で口腔内の状況が改善できるわけではありませんが、障害のある方が、健診を受けることを経験し、かかりつけ歯科医を持ち、定期管理を受けられるようになること、この姿は理想的であると思います。

この大会で、4県の歯科医師会の先生方から障害歯科に取り組む上での現状と課題の報告がありましたが、静岡県歯科医師会や郡市歯科医師会の先生方に御協力いただき、やっと障害者歯科相談医の名簿公開ができた頃と比較しますと、今回のような研究会の開催や大学の先生方の御指導・御協力等があり、現在は非常に恵まれた状況であると感じました。

臨床家の先生方からは甘い!と言われるかもしれませんが、充実した研修を受講され、登録歯科医になった先生方に、まずは、障害児(者)施設の健診と事後フォローを歯科医院で実施していただくことが、ひとつの解決方法ではないかと、現場に出て実感しております。

そして先生方が障害者歯科に取り組んでいただくためには、先生方とチームを組む、歯科衛生士、受付の方等、スタッフ方々に障害者のことを学んでいただく機会を作っていただくことが必要だと思います。そのような意味で、この研究会は歯科専門職だけでなく、患者さんを支える、ケアマネージャー、社会福祉士等、多岐に渡る分野の皆様が集い、意見交換ができるすばらしい場であると思いました。今回は本当にありがとうございました。またこのような機会をあたえていただいたことにも、重ねて感謝いたします。        



第5回 東海障害者歯科臨床研究会に出席して


                   静岡県済生会 静岡医療福祉センター 児童部歯科   
                                        仲尾賢一先生

 

今回の緒方克也先生による特別講演、及び東海4県各歯科医師会による討論会「地域で見る障がい者歯科のこれから」について興味深く拝聴させて頂きました。特別講演では社会福祉のなかでの歯科医師の役割の重要性について話されました。私も医療福祉センターに勤務しており、講演の内容に共感できることばかりでした。私も常に自立困難な障がい者や高齢者の方がいかにして口腔内を清潔に保てるか、歯科受診できる環境にあるか、など考えながら診療を行っており、自らブラッシングを行うことや歯科受診が困難な方はホームヘルパーや保護者による介助が必要であり、チームで支援していく重要性はいつも感じております。討論会においては各県の歯科医師会での取り組みについて発表され、共通した問題点や課題がとても理解しやすいシンポジウムであったと思います。このような各地域の取り組みや課題をみんなで話し合い、その後の経過などお聞きする機会がまたあればと思います。今後もこの研究会が発展し、社会福祉のなかで歯科の担う役割の重要性がさらに認知され、歯科医療従事者が誇りを持って障がい者福祉に関わり活躍できることを願って止みません。