7月10日に開催しました第8回東海障害者歯科臨床研究会総会および学術大会には、140名(日本障害者歯科学会会員125名、非会員15名)のご参加をいただき、お陰様で無事終了することができました。誠にありがとうございました。また、準備・運営に携わっていただいた岐阜県幹事の皆様、岐阜県歯科医師会スタッフ、研究会事務局の方々のご協力に改めて感謝申し上げます。
本研究会で取り上げなければならない課題は多岐に渡りますが、今回は地域医療の第一線で活躍されている一般開業歯科医院の皆様に対して、より具体的な診療上の知識・工夫についての情報交換ができればと考え、大会テーマを「障害者歯科の知識・工夫、そして熱意~地域で求められる医療機関を目指して~」とさせていただきました。
午前中には学会認定研修会として、平塚市でご開業の芳賀定先生に「開業医での障害者歯科医療は特殊なことでしょうか?-開業歯科医院における障害者歯科医療への工夫と実際」の演題でご講演いただきました。芳賀先生は「障害者医療が人間医療の原点である」という理念のもと日々障害者歯科に取り組んでおられますが、開業歯科医院が障害者歯科を行う際の課題や問題点に触れ、実際に障害者歯科診療を行う場合に難しいと考えられている「患者とのコミュニケーションの取り方」や「行動療法に基づいた対応方法」、介護者とのトラブル回避や歯科診療時の事故防止のための「リスクマネージメントの方法」「安心・安全・信頼とリスクマネージメントに基づいた歯科診療」を目指して先生が行っているカルテや各種資料の工夫、7Sに基づいた診療システムなど、ビデオの供覧をまじえて紹介していただきました。また、第3次障害者基本計画(平成25年内閣府)や障害者差別解消法の公布により、障害者の人権擁護と障害者歯科医療のあるべき姿やかかわり方など再考の時期に入ったこともご指摘いただきました。芳賀先生の障害者歯科に対する熱意を感じると共に、歯科医師だけでなく診療スタッフの皆様方にも大変参考になる講演内容であったと思っております。
今回の大会内容が、日本障害者歯科学会の初期の頃多くあったような、診療上の工夫をたくさん紹介できた懐かしい内容であったとの感想をいただき、当初目指していた大会にできたことを、大会長として嬉しく思っております。障害者歯科が決して特別なものではなく、少しの工夫と熱意でできる分野であることをご理解いただき、障害者の人権擁護と障害者歯科医療のあるべき姿を模索しながら、多くの開業医が普通に取り組んで頂ける時代が来ることを祈念しつつ、御礼の挨拶とさせていただきます。
最後に、後援をいただきました(公社)岐阜県歯科医師会、(一社)岐阜県歯科衛生士会、協賛企業の皆様に厚く御礼申し上げます。
四日市市歯科医療センター
歯科衛生士 松岡陽子
平成28年7月10日(日)、第8回東海障害者歯科臨床研究会 総会及び学術大会に参加させていただきました。
午前は日本障害者歯科学会認定医講習会が開催されました。「開業医での障害者歯科医療は特殊なことでしょうか?」-開業歯科医院における障害者歯科医療への工夫と実際ーとの内容で芳賀定先生にご講演頂きました。芳賀先生はご自身が障害者歯科へ携わるきっかけとなった症例を動画と写真を用いてご説明下さいました。一般歯科診療所での障害者歯科治療は特別ではなく通常の診療との差異はないとの事でした。多くの工夫や芳賀先生の患者さんへの強い思いが伝わる大変貴重な講演でした。
午後からは東海障害者歯科臨床研究会学術大会で『開業医における障害者歯科の工夫~1.2次医療機関を目指して~』というタイトルにてシンポジウム形式での開催となりました。パネリストの良盛典夫先生においては往診道具やご自身が診療室で欠かせないiPadの活用法について詳しくお話しいただきました。また朝比奈義明先生は診療室での自閉症患者への対応法を詳細にお話しいただきました。お2人の先生の対応法は私たちの診療へもすぐにでも取り入れることができるような物が多く大変参考になりました。小﨑祐美子先生はソーシャルワーカ―で障害者の福祉制度についてお話しいただきました。歯科医療従事者では知りえない福祉制度について、医療難民になる方をどのようにサポートしていくかをマネージメントされるお仕事を知ることができました。その後のディスカッションでは地域の歯科医院は障害者の患者の様々な相談窓口にもなるのでソーシャルワーカーとの連携も必須であるという事、障害者やその家族に関心をもち障害を理解していくことが地域医療の原点であるという事が話されました。
私と致しましても障害者歯科にかかわる歯科衛生士として今回の4人の先生方の患者さん一人ひとりに歩み寄って診療される姿を拝見させて頂き、より一層、障害者の方の家族支援を行っていきたいと思いました。障害者を支える家族は精神的にも肉体的にも多くの負担を強いられます。その負担や不安要素を理解し、家族に対する支援を考える事も重要であると今回の学術大会で感じました。最後になりましたが、大会長の水野明広先生、準備委員長の萩谷勅信先生はじめスタッフの皆様方、大会運営本当にお疲れ様でした。また、このような機会を与えて下さいました東海障害者歯科臨床研究会に改めて深謝致しますとともに、東海障害者歯科臨床研究会の更なる発展を心よりお祈り申し上げます。
参加者Voice
朝日大学歯学部口腔病態学講座障害者歯科学分野
歯科医師 金城 舞
第8回東海障害者歯科臨床研究会総会および学術大会に参加して
平成28年7月10日(日)に第8回東海障害者歯科臨床研究会総会および学術大会に今回初めて参加させていただきました。
午前は認定研修会が行われ、「開業医での障害者歯科医療は特殊なことでしょうか?」-開業歯科医院における障害者歯科医療への工夫と実際-というテーマで芳賀定先生のご講演がありました。芳賀先生は神奈川県平塚市で開業され、その医院ではほぼ半数が障害児者であるとのことでした。開業医で障害者歯科診療を行うことは、とても難しく様々な問題がおこってきます。その一つ一つの問題に対して様々な理論と先生の豊富な経験からどのように解決してきたかを映像など交えてとてもわかりやすくお話していただけました。特に心に残ったのは、歯科診療における構造化のお話です。障害児者でも健常者にも応用できる工夫がたくさんあり、すぐにでも取り入れたいと思いました。
午後からは東海障害者歯科臨床研究会学術大会がありました。「開業医における障害者歯科の工夫~1.2次医療機関を目指して~」をテーマに、座長:水野明広先生、コメンテーター:芳賀定先生、パネリスト:良盛典夫先生、朝比奈義明先生、小﨑祐美子先生の御三方にご講演していただきました。三人ともご自身でされている工夫を、症例を交えながらお話していただきました。開業医における障害者歯科診療は時間もかかるし、人手もかかるし、医学的リスクも高いとデメリットばかり目についてしまいますが、やりがいがある分野であるし、少しの工夫で誰もができることであると感じました。障害児者は移動だけでも、本人や家族の大きな負担になるので、少しでも多く地元でその地域でみていけるようになればいいなと思いました。
今回、東海障害者歯科臨床研究会総会・学術大会に参加して、大変参考になることばかりで感謝しています。東海障害者歯科臨床研究会の益々のご発展をお祈り申し上げます。